メダカ

去年の11月、実家に帰るとメダカがいた。

 

玄関の外に大きい樽があった。

 

母が言った。

「この樽にメダカを入れて、飼おうとと思う。」

 

これから冬だし、メダカ外にだしたら、寒くないだろうか。

 

妹と私は一瞬思った。

 

「大丈夫。メダカは凍ったら下の方にいくし、外で生きてる魚でしょ。たくさん増えてかわいいよ。」

 

母と父は、家の小さな味噌樽の中に入ったメダカを、外の大きな樽に移した。広い場所でメダカは快適そうに見える。

 

けれど次の日、すごくたくさん雨が降って、外の樽には雨どいを伝って集まった水が大量に流れ込んでいる。樽からは水が滝のように流れ落ちている。

 

「メダカ逃げちゃわないかな。樽の水あふれている。いくらなんでも、こんなに激しく流れ込んだんじゃ、樽の水と一緒に外に出てしまうよ。」

 

私と妹は大雨の中、樽の中を覗き込んだ。あまりに激しい雨で、水面が動いていて中が見えない。

 

「メダカはそんなにバカじゃないよ。自分から流れ落ちたりなんかするもんか。自然に生きてるものなんだから。」

母はいった。私と妹は信用した。

 

しかししばらくして、それが原因か何が原因か、メダカはいなくなってしまった、と連絡が入った。

 

今回お正月に実家に帰ると、家の中の小さなプラスチック容器の中に、懲りずに新しいメダカがいた。

 

何かを学んだらしい私の家族は、凍ったりせず、雨も雪も侵入しない場所で、新しいメダカを飼っている。 みんなとてもかわいい。