「ビーフシチューとか普段つくる?」
「食べたいけど、高価なのであんまり作りません。」
「じゃあ、カレーでもいいんだ。」
「カレーなら作ります。」
「月桂樹があるんだけど、持ってかないかな。今、伐採して燃やすとこなんだ。」
月桂樹?
「カレーやシチューに入れて、香りが出るんだ。」
「もしかしてローリエですか?」
「そう。」
モザイクの先生の庭にはいろいろな木や葉っぱがあるけど、イタリアンパセリとかバジルとかスパゲッティに入れたらいいようなものも多い。ローリエまであるなんて。ここだけ、北陸の田舎ではない石畳が続くアッシジとかの田舎のようである。
「もう燃やすんだから、たくさん採ってたらいいよ。」
その声にもう一人の女の子と、がつがつ月桂樹の葉っぱを剪定して、ビニール袋に入れた。
これだけ干しとけば、向う10年はローリエを買わなくてもいい、そうつぶやきながら、やみくもに、言われなければ伐採されようと燃やされようと特に私とは無関係だった葉っぱを、袋に詰めた。
先生のお影で、家には、うなぎに入れる山椒や、イタリアの料理に使えると思われるのイタリアンパセリ、いつかビーフシチューに入れるだろうけど当分はカレーに入れるであろうローリエが増えた。
けれどこれらは上級料理に添えて、その料理がより上級になるための代物に思えるため、本当に彼らがこの家で自分の本来の活躍できるのかはよく分からない。
ちなみにいつかここで書いた山椒は、厳しい雪の中、外に放っておいたら葉っぱがなくなってしまったので、例えウナギが来たとしてもすぐに威力を発揮できないと思うので、余計にかわいそうに思える。